歯周病菌が全身疾患に大きく関与しているのが、医科でも問題になってきています。口の中には 400~600種類の細菌が存在しています。
そのうちの歯周病の原因菌が体の抵抗力が落ち、気管支から肺に入り込むと肺炎になってしまいますし、わずかでもお口の中で出血を起こすと毛細血管から歯周病菌が入り、心臓で炎症を起こし心内膜症になる危険があります。
歯周病の人が心臓病になる危険率は、そうでない人に比べ2~3倍にあがります。食道がん、糖尿病、早産、低体重児出産、高血圧などに関与しているといわれています。
糖尿病は成人の5~6人に1人が患者と予備軍といわれております。慢性の高血糖状態が続くと様々な合併症がありますが、その中に歯周病も入っています。歯周病がある糖尿病患者では、歯周組織の微小血管障害、歯周結合組織の代謝の異常、免疫機能の低下や唾液の減少・口腔乾燥を発症する場合があります。
さらに、重度の歯周病は、糖尿病患者における虚血性心疾患ならびに糖尿病腎症による死亡の予知因子となることや、糖尿病患者に対し歯周病の治療・管理を行うことにより、血糖コントロールが改善したとの報告もなされております。
糖尿病の方が歯周病になりやすいのは、血管障害により歯ぐきの血流も悪くなり白血球がうまく運ばれず、抵抗力が落ち歯周病菌に感染しやすくなります。高血糖状態で歯周病菌に感染すると体はあごの骨を溶かす物質を多量に放出して骨を溶かします。コラーゲン代謝が低下し、歯ぐきが弱く傷の治りが悪くなり歯周病菌の感染のリスクが増大します。
このように、糖尿病と歯周病は相互に与える影響が大きいことが数多く報告され、両者に密接な関係があることが年々明らかになってきおります。
さくら歯科は日本糖尿病協会歯科医師登録医となりっており糖尿病・歯周病を罹患している患者さんに対し、医科歯科連携を行い糖尿病・歯周病の予防・治療に努めております。
血糖コントロール状態の指標と評価
指標
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優
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良
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可
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不可
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不十分 | 不良 | ||||
HbA1c(%)
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5.8未満
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5.8~6.4
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6.5~6.9
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7.0~7.9 |
8.0以上
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空腹時血糖値
(mg/dl) |
80~110未満
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110~130未満
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130~160未満
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160以上
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食後2時間血糖値
(mg/dl) |
80~140未満
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140~180未満
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180~220未満
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220以上
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※HbA1cで新しい国際基準値は表の値に0.4加えた値になります。
空腹時血糖値が160(mg/dl)以上、食後血糖が220(mg/dl)以上、HbA1cが8%以上に維持されると、合併症発症、進行の可能性が非常に高くなります。
高血糖が続くと歯周組織の毛細血管がもろくなり歯周病が進行しやすく歯を支えている歯槽骨が溶けて歯を失う原因となります。
糖尿病の方が歯周病の治療をしっかり受けられHbA1cの値が1%下がったという研究報告があります。
また、歯科用パノラマレントゲンにて骨粗鬆症の診断も出来るようになりました。
骨粗しょう症は、特に閉経後女性に見られる骨密度の低下により骨折の危険性が高まります。
若い時に、十分な運動、バランスの良い栄養を摂取しなければ、70歳以上では、2人に1人骨粗鬆症になるといわれております。原因は女性ホルモンであるエストロゲンの低下ですが、それによりあごの骨密度も低下し歯周組織にも影響を与えるといわれております。
さくら歯科でも骨粗鬆症の危険性が見られれば協力医院に紹介させていただきます。御心配な方は、一度ご相談下さい。
黄で囲まれた部分の皮質骨(白く写っている部分)が厚い場合骨密度は正常
黄で囲まれた部分の皮質骨(白く写っている部分)が波をうっていて不規則
骨粗鬆症が疑われる
骨粗しょう症
骨組織の密度が低下して骨に鬆が入ったようになり、骨折し易くなる状態を骨粗鬆症といい、閉経期以降の女性に多くみられます。
骨粗鬆症は歯槽骨にもみられ、抜歯後の歯槽堤の吸収は、骨粗鬆の度合いがひどいほど速く重度になる傾向があります。
これに喫煙の要因が加わるとさらに促進されます。
=骨粗鬆症を防ぐには=
- カルシュウムの摂取を心掛ける
- 日光浴をしてビタミンDの摂取を心掛ける
- 1日8,000歩程度を目標にしたウォーキング
- アルコール、コーヒーは少なめに
- 喫煙者は禁煙する
その他、喫煙者は、歯周病の進行が早く、治療しても治りにくい。若い時期から歯周病になりやすい。歯肉の色が悪くなる(暗黒紫色)など喫煙は歯周病の最大の危険因子となっております。
耳が痛いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
2011年「全国たばこ喫煙者率調査」では、男性が33.7%、女性が10.6%、男女計で21.7%の方がタバコを吸っているというでデーターがあります。 特に、20~30代の女性の増加が目立っているようです。タバコの煙は女性ホルモンの分泌を抑え、細胞を傷つける活性酸素を発生させます。たばこ4本で、活性酸素を抑える1日のビタミンCを帳消しにしてしまうそうです。妊娠、出産にも影響があるといわれております。
受動喫煙の問題もあり、家族に喫煙者がいる場合、園児や小学児童が虫歯になりやすくなったり、歯肉が黒ずんだりする傾向があると発表されております。このように、喫煙は肺がん、心臓病のリスク因子だけでなく、お口の健康にも影響を及ぼします。
さくら歯科クリニックは豊橋市受動喫煙防止対策実施施設になっています。
最新のトピックとして、歯周病原菌の産生する酪酸が、潜伏するエイズウィルスの活性化に深く関与することが解ってきており、従来の全身疾患に加え歯周病がウィルス感染にも関与している可能性があり、歯周病ケアが極めて重要であります。
このように一口に歯周病といっても、環境的要因である喫煙、ストレス、生活習慣、その他、遺伝因子(親、兄弟が歯周病)も密接にからんでおります。
最近、リンゴをまるかじりしたことがありますか?
一昔のコマーシャルにリンゴをかじった時に歯ぐきから血が出ると歯周病のサインというのがありました。
いつまでも健康な歯と歯ぐきを維持するための基本は、毎日のプラークコントロール、ストレスの少ない正しい生活習慣、歯科医院での定期的なメインテナンスをおすすめします。
歯周病セルフチェックリスト
以下の症状が思い当たれば要注意!
- 歯ぐきがむずがゆい
- 歯みがきのとき、歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが腫れぼったい
- 冷たい物や熱い物が歯にしみる
- 歯と歯の間に食べ物がよくはさまる
- 朝、口がネバネバする
- 口臭が気になる
- 歯がのびてきた感じがする
- 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
- 歯並びが変わってきた
- 歯ぐきを押すと白いウミが出る
- 指で動かすと、歯が揺れる
- カタイ物が噛みにくくなった
- 糖尿病を患っている
歯周病の進行
健康な歯周組織の状態です。
歯肉炎
歯肉(歯ぐき)が赤く腫れ上がり、歯を磨いたりリンゴなどをかじると出血します。
歯石除去や正しいブラッシングをすれば健康な歯肉にもどります。
軽度歯周炎
歯周ポケット(歯肉と歯の間のすき間)が広くなり、そこから出血したり膿が出て口臭を感じる場合があります。歯石除去、歯周ポケット洗浄、レーザー治療、正しいブラシング、化学療法などおこないます。
中等度歯周炎
歯周ポケットでの炎症が慢性化し、歯根膜、歯槽骨といわれるところが先端部より溶けてきます。このころは口臭もあり、歯が浮いた感じがします。強くかむと痛みを伴い、歯がぐらついてきます。 初期治療、化学療法、レーザー治療のほかに一部歯周外科が必要となります。
重度歯周炎
歯根を支えている歯槽骨がほとんど溶けてしまいます。歯根が露出し、歯のぐらつきがますますひどくなります。硬いものは食べられません。 歯周外科の対象です。予後不良の場合は初期治療後、義歯、インプラントも視野にいれて機能回復をはかります。
口臭について
口臭の主な原因物質は、揮発性の硫黄化合物(VSC: Volatile Sulfur Compounds)です。
つまり、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドが単独、あるいは混在して認められます。これらVSCは9割以上が口の中、主に口腔内に生息している細菌によって産生されています。
口臭測定器
口臭測定器「ブレストロン」は、口臭の原因となるVSCガス(揮発性硫化化合物=臭いの元の1つ)を検知し、わずか45秒で測定結果を表示することができます。
口臭は舌の後方の深い溝にいる細菌によって起こると報告されています。
- 歯垢の除去(歯だけでなく舌ブラシで舌も磨く)
- 虫歯の治療・頻回な洗口や飲料水の摂取、消臭作用のあるガムを噛む
- ストレスが原因の場合、緊張感を減らし唾液の分泌量を減少させない
- 口臭予防に役立つ食品として、緑茶があり、カテキンが殺菌効果を担っている。
- 唾液分泌の促進が口臭予防につながり、よく噛んで食事をすることで促されます。
- 口呼吸を防止する。